「他社も『業界No.1』と書いているから大丈夫だろう」「インフルエンサーに商品を送って投稿してもらった」――こうした日常的な販促の判断が、景品表示法・特定商取引法・薬機法の違反として措置命令や課徴金につながることがあります。この記事では、3つの法律が何を規制しているのか、優良誤認・有利誤認・ステマ規制、通販の最終確認画面、健康食品・化粧品の表現のNG例と、違反したときに何が起きるのかを、条文を確認しながら整理します。
広告・表示を規制する3つの法律の役割分担
中小企業の販促で問題になるのは、「表示の中身」を規制する景品表示法、「通販の取引の仕方」を規制する特定商取引法、「医薬品等の効能表現」を規制する薬機法の3つです。一枚のLPに3つの法律が重なることも珍しくありません。
| 法律 | 規制の対象 | 典型的なNG例 | 違反時の主な措置 |
|---|---|---|---|
| 景品表示法(5条) | 自社が供給する商品・サービスについての消費者向けの表示全般 | 根拠のない「業界No.1」「満足度98%」、架空の「通常価格」からの値引き、広告と分からないインフルエンサー投稿 | 措置命令(7条)、売上額の3%の課徴金(8条)、100万円以下の罰金(48条) |
| 特定商取引法(通信販売) | ネット通販・カタログ通販の広告と申込画面 | 事業者名・返品条件の記載漏れ、「初回500円」だけを強調して定期縛りを隠す、最終確認画面に総額・解約条件がない | 業務改善の指示(14条)、2年以内の業務停止命令(15条)、申込みの取消(15条の4)、罰則(70条・72条) |
| 薬機法(66条・68条) | 医薬品・医薬部外品・化粧品・医療機器等の効能・効果等の広告。健康食品でも医薬品的な効能を標ぼうすると対象 | サプリに「糖尿病が改善」、化粧品に「シワが消える」「医師も推奨」 | 措置命令(72条の5)、対価合計額の4.5%の課徴金(75条の5の2)、2年以下の拘禁刑または200万円以下の罰金(85条) |
景品表示法 ― 優良誤認・有利誤認と不実証広告規制(5条・7条)
景品表示法5条は、事業者が自己の供給する商品・サービスについて次の表示をすることを禁じています。
優良誤認表示(5条1号)
品質・規格その他の内容について、実際のものよりも「著しく優良」と示す表示、または事実に相違して競合他社より著しく優良と示す表示です。「No.1」「最高級」「医師の9割が推奨」などは、裏付け資料がなければここに該当する可能性が高くなります。
有利誤認表示(5条2号)
価格その他の取引条件について、実際のものや競合他社より「著しく有利」と誤認される表示です。販売実績のない「通常価格」を並べて値引きを演出する二重価格表示が典型です。
不実証広告規制(7条2項)
効果・性能を示す表示については、消費者庁長官が期間を定めて「表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料」の提出を求めることができ、提出しなければその表示は優良誤認表示と「みなされ」ます。広告を出す時点で資料を揃えておく必要があります。
景品表示法は「嘘をついたか」ではなく「消費者が実際以上に良い・得だと誤認するか」で判断されます。社内に悪意がなくても、根拠資料を示せない強調表現はそれだけで違反と扱われ得ます。
ステマ規制 ― 「広告であることを隠す」表示(5条3号)
2023年10月1日から、「一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示」が5条3号の指定告示に加わり、いわゆるステルスマーケティングが景品表示法違反となりました。問題になりやすいのは次の場面です。
- インフルエンサーに商品を無償提供し、投稿内容や時期を指定しているのに「PR」「広告」の表記がない
- 購入者に割引やポイントを渡す条件として「星5のレビュー」を求める
消費者庁は、規制の対象は「商品・サービスを供給する事業者(広告主)」であると明示しています。措置命令を受けるのは投稿者ではなく依頼した会社ですので、投稿者との契約書や依頼メールで広告であることの明示を義務付けておくことが防御になります。5条3号の表示は課徴金の対象外ですが(8条1項)、措置命令と社名公表のリスクは残ります。
景品表示法に違反したとき ― 措置命令・課徴金・罰則
- 措置命令(7条1項):表示の差止め、再発防止策、消費者への周知などを命じられ、社名とともに公表されます。中小企業では、課徴金よりも公表による信用低下の方が実害として大きいことが多いです。
- 課徴金納付命令(8条):優良誤認・有利誤認表示については、対象商品の売上額の3%の課徴金が課されます。対象期間は最長3年で、計算した額が150万円未満なら命令されません。違反事実を自ら報告すれば50%減額(9条)、消費者への返金措置を実施すれば相当額が控除される仕組み(10条)もあります。
- 確約手続:違反の疑いの段階で自主的な是正計画の認定を受け、措置命令や課徴金納付命令を受けずに終える手続です(2024年10月1日施行の改正で導入)。
- 罰則:措置命令に違反すると2年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金(46条)。優良誤認・有利誤認表示そのものに100万円以下の罰金を科す直罰規定(48条)もあります。
権限は消費者庁だけでなく都道府県知事にもあります。
調査の連絡が来たら、期限内に根拠資料を揃えること、確約手続や自主報告による減額が使えるかを早期に検討することが結果を左右します。
特定商取引法 ― 通販広告の表示事項と最終確認画面(11条・12条・12条の6)
自社ECサイトやモール、SNS経由で商品やサービスを売っていれば「通信販売」に当たります。特定商取引法は「書くべきことを書いているか」「申込み直前に正しい情報を見せているか」を見る法律です。
広告の表示事項(11条)と誇大広告の禁止(12条)
通販の広告には、販売価格(送料を含む)、支払時期・方法、引渡時期、申込みの撤回・解除に関する事項(返品特約を含む)、事業者の名称・住所・電話番号などの表示が義務付けられています。12条は、商品の性能や解約条件などについて「著しく事実に相違する表示」「著しく優良・有利と誤認させる表示」を禁じ、違反には100万円以下の罰金(72条)があります。
最終確認画面の表示義務(12条の6)
定期購入トラブル対策の中心が12条の6です。申込み確定前の画面には、次の事項を表示しなければなりません。
| 最終確認画面に必要な表示 | サブスク・定期購入での注意点 |
|---|---|
| 商品・サービスの分量 | 各回の分量と総回数(または回数の目安)を明示する |
| 販売価格(送料を含む) | 初回価格だけでなく2回目以降の価格と支払総額を示す |
| 支払時期・方法/引渡時期 | 初回と2回目以降の決済・発送時期を示す |
| 申込期間の定めがある場合はその旨 | 「本日限り」のカウントダウンは実態と一致させる |
| 申込みの撤回・解除に関する事項 | 解約の方法・期限・連絡先を、リンク先ではなく画面上で読めるようにする |
加えて、「申込み」になることを誤認させる表示(ボタンが「次へ」なのに実は確定している等)や、上記事項について誤認させる表示も禁止されています(12条の6第2項)。表示をせず、または不実の表示をした場合は3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金(70条2号)があり、消費者は誤認して行った申込みを取り消せます(15条の4)。業務改善の指示(14条)や2年以内の業務停止命令(15条)は公表されます。
返品特約の表示(15条の3)
通信販売にはクーリング・オフはありませんが、商品の引渡しを受けた日から8日間は消費者が送料を負担して返品できるのが法律上の原則です。「返品不可」などの特約を設ける場合は、広告に表示し、ネット通販では最終確認画面にも表示しておかなければ、特約の効力が認められません。
最終確認画面は「デザインの問題」ではなく「法律上の表示義務」です。制作会社やモールのテンプレートに任せきりにせず、分量・総額・解約方法の3点が一画面で読めるかを自社で確認してください。
薬機法 ― 健康食品・化粧品の表現で越えてはいけない線(66条・68条)
薬機法66条1項は、「何人も」医薬品・医薬部外品・化粧品・医療機器等の名称・製造方法・効能・効果・性能について、明示・暗示を問わず虚偽または誇大な記事を広告・記述・流布してはならないと定めています。医師その他の者が効能・効果を保証したと誤解されるおそれのある記事も誇大広告に当たります(66条2項)。
68条は、承認・認証を受けていない医薬品・医療機器等の名称・効能・効果等の広告を禁じています。健康食品やサプリメントは「食品」ですが、「血糖値を下げる」「がんを予防」など医薬品的な効能・効果を標ぼうすると医薬品に該当すると判断され、未承認医薬品の広告として68条違反になり得ます。
業種別のNG例
- 健康食品:「〇〇が治る」「免疫力が上がる」「飲むだけで痩せる」など、身体の機能や疾病に効くという表現
- 化粧品:「シワが消える」「肌細胞を活性化」「アトピーに効く」など、化粧品に認められた効能効果の範囲を超える表現
- 共通:「医師推奨」など専門家の保証、使用前後写真で効果を断定する表現、「副作用なし」といった安全性の保証
違反に対しては、厚生労働大臣・都道府県知事による措置命令(72条の5)のほか、66条1項違反には対価合計額の4.5%の課徴金(75条の5の2。225万円未満は命じられません)、66条1項・68条違反には2年以下の拘禁刑もしくは200万円以下の罰金またはその併科(85条)が定められています。具体的な表現の可否は、厚生労働省の「医薬品等適正広告基準」とその解説が判断の基準になります。
社内の広告チェック体制の作り方(景品表示法22条)
景品表示法22条は、事業者に対し、表示を適正に管理するために「必要な体制の整備その他の必要な措置」を講じることを義務付けています。次の仕組みは中小企業でも作れます。
- 根拠資料のファイリング:「No.1」「〇%が実感」など数値・比較・効果を示す表現ごとに、調査データ・試験結果・仕様書を保存し、調査の対象・時期・方法が表現と対応しているかを確認する
- 公開前の二重チェック:広告・LP・SNS投稿を、作成者以外の1名が「誤認しないか」「書くべき事項があるか」「薬機法の効能表現がないか」の3点で確認する
- 外部委託先との契約:広告代理店・制作会社・インフルエンサーとの契約書に、表示規制の遵守、広告であることの明示、事前確認への協力、違反時の対応分担を明記する
当事務所は企業法務を専門とする弁護士チームに加え、医師資格を持つ弁護士が在籍しており、健康食品・化粧品・医療分野の表現についても薬機法と景品表示法の双方から確認できる体制です。
よくある質問(FAQ)
「業界No.1」「顧客満足度98%」と書くのは違法ですか?
インフルエンサーに商品を無償で送っただけでもステマ規制の対象になりますか?
ネット通販でクーリング・オフは必要ですか?
定期購入の初回価格を大きく表示するのは問題ですか?
サプリメントの広告に「健康維持に」「美容に」と書くのは大丈夫ですか?
消費者庁から資料提出の要求が来ました。どう対応すべきですか?
まとめ
- 景品表示法は「消費者が実際以上に良い・得だと誤認するか」で判断され、根拠資料を示せない強調表現は優良誤認表示とみなされる(5条・7条2項)
- ステマ規制で措置命令を受けるのは投稿者ではなく広告主である会社。委託先との契約で広告明示を義務付ける
- 違反すると措置命令と社名公表、売上額3%の課徴金、直罰の罰金があり、都道府県も権限を持つ
- 通販は11条の表示事項と12条の6の最終確認画面(分量・総額・解約条件)を自社で点検し、返品特約は広告と最終確認画面に表示する
- 健康食品・化粧品は薬機法66条・68条で効能効果の表現が制限され、景品表示法と二重に処分されるリスクがある
広告・表示の規制は、一度違反が公表されると取り戻すのに時間がかかる分野です。日常の広告チェックから調査対応までを継続的に任せたい場合は顧問弁護士サービスを、個別の広告・LPの確認や消費者庁からの連絡への対応についてはお問い合わせ(無料相談)をご利用ください。
※ 本記事は一般的な情報提供を目的とするものであり、個別の事案に対する法的助言ではありません。法令・制度の内容は公開日時点のものです。具体的なご対応にあたっては、最新の法令をご確認のうえ、弁護士にご相談ください。
