ホーム分野別記事一覧顧問弁護士サービス弁護士紹介YouTubeメルマガお問い合わせ
メルマガ登録(無料) 無料相談・お問い合わせ 電話 03-6824-4639(平日10:30–17:00)
会社法・ガバナンス

株主総会・取締役会の正しい運営 ― 招集手続・書面決議・議事録の作り方と、議事録がないと困る場面

「株主は社長一人、取締役は家族だけ。株主総会も取締役会も開いたことがない」――珍しくない状況です。日常の経営に支障はなくても、役員変更の登記、融資審査、M&A、株主や元役員との紛争の場面で、「議事録がない」ことが突然大きな問題になります。この記事では、会社法の条文に沿って、株主総会・取締役会の招集手続、書面決議(決議の省略)の使い方、議事録の作り方と保存期間、議事録を残さないと困る場面を整理します。

「形だけ」の株主総会・取締役会が問題になる理由

株式会社には必ず株主総会と取締役が置かれます(会社法326条1項)。取締役会や監査役は定款の定めで置く任意の機関で(同条2項)、設置が義務づけられるのは公開会社などに限られます(327条1項)。株式に譲渡制限のある一般的な中小企業(非公開会社)では、取締役会を置くかどうかは会社の選択です。

ところが、設立時の雛形で取締役会設置会社にしたまま一度も開いていない会社は少なくありません。また、取締役会を置かない会社でも、定時株主総会は毎事業年度の終了後に必ず招集しなければなりません(296条1項)。株主が一人でも、決議(または後述の書面決議)と議事録は必要です。

決算承認、役員の選任、役員報酬、定款変更、重要な財産の処分といった判断は、株主総会や取締役会の決議があってはじめて会社の意思として有効になり、その証拠が議事録です。議事録がなければ、決議の存在そのものを証明できません。

株主総会の招集手続 ― 招集通知の期限と全員同意による省略

株主総会には定時株主総会と、必要なときにいつでも開ける臨時株主総会があり、取締役が招集します(296条)。取締役は日時・場所、目的事項(議題)などを決定し(298条1項)、取締役会設置会社ではこの決定を取締役会の決議で行います(同条4項)。

招集通知の期限と方法は会社の類型で異なる

招集通知は原則として総会の日の2週間前までに発しますが、非公開会社では1週間前まで、取締役会を置かない非公開会社では定款でさらに短縮できます(299条1項)。取締役会設置会社では書面(株主の承諾があれば電磁的方法)による通知が必要ですが(同条2項・3項)、取締役会を置かない会社では口頭やメールでも構いません。

会社の類型招集通知の期限通知の方法
取締役会を置かない非公開会社1週間前まで(定款で短縮可)書面に限られない(口頭・メール可)
取締役会設置会社(非公開)1週間前まで書面(承諾があれば電磁的方法)
公開会社2週間前まで書面(承諾があれば電磁的方法)
株主全員の同意がある場合招集手続を省略して開催できる(300条)

株主が社長と家族だけの会社では、全員同意で招集手続を省略して開催し(300条)、その旨を議事録に残すのが実務的です。

決議の要件

普通決議は、議決権の過半数を持つ株主が出席し、出席株主の議決権の過半数で成立します(309条1項)。定款変更や事業譲渡、解散などの特別決議は、出席株主の議決権の3分の2以上の賛成が必要です(同条2項)。取締役会設置会社の株主総会は、招集時に定めた目的事項以外を決議できません(同条5項)。

ポイント

招集通知の期限と方法は、取締役会の有無と公開・非公開で変わります。全員同意で招集手続を省略した場合も、その旨を議事録に明記すれば、後日の手続の瑕疵の主張を防げます。

株主総会を開かずに済ませる「書面決議」の正しい使い方

株主が少数の中小企業で最も活用しやすいのが、株主総会の決議の省略、いわゆる書面決議(みなし決議)です。取締役または株主が議題を提案し、議決権を持つ株主の全員が書面または電磁的記録(メールやPDFの同意書など)で同意したときは、その提案を可決する決議があったものとみなされます(319条1項)。実際に集まる必要がありません。

注意点は三つです。第一に「全員」の同意が必要で、一人でも未回答があれば成立しません。第二に、同意書面または電磁的記録を10年間本店に備え置く義務があります(同条2項)。第三に、議事録の作成は免除されず、会社法施行規則72条4項1号により、決議があったとみなされた事項の内容、提案者の氏名・名称、みなし決議の日、議事録作成を担当した取締役の氏名を記載します。

事業報告などの報告事項も、取締役が株主全員に通知し、株主全員が書面等で同意すれば報告があったものとみなされます(320条)。

ポイント

書面決議は「開かなくてよい」制度ですが、「書類を作らなくてよい」制度ではありません。提案書・全株主の同意書・議事録の3点をセットで保存します。

取締役会の開催義務と運営 ― 3か月に1回の報告と決議の省略

取締役会はすべての取締役で組織され(362条1項)、業務執行の決定、取締役の職務執行の監督、代表取締役の選定・解職を行います(同条2項)。重要な財産の処分・譲受け、多額の借財、重要な使用人の選任・解任、支店など重要な組織の設置・廃止は、代表取締役に委任できず、取締役会で決議しなければなりません(同条4項)。「社長が決めたから有効」とは言えない事項があるのです。

代表取締役と業務執行取締役は、3か月に1回以上、職務執行の状況を取締役会に報告する義務があり(363条2項)、この報告は通知による省略が認められません(372条2項)。つまり取締役会設置会社は、少なくとも年4回、現実に開く必要があります。

招集・決議・決議の省略

招集通知は会日の1週間前まで(定款で短縮可)に各取締役(監査役設置会社では各監査役にも)に発し(368条1項)、全員の同意があれば省略できます(同条2項)。決議は、議決に加わることができる取締役の過半数が出席し、その過半数で行い(369条1項)、特別の利害関係を持つ取締役は議決に加われません(同条2項)。

取締役全員が書面等で同意すれば決議があったものとみなす「決議の省略」も可能ですが、株主総会と異なり、定款にその旨の定めがあることが前提で、監査役が異議を述べた場合は成立しません(370条)。定款に定めがなければ、まず定款変更(特別決議)が必要です。

項目株主総会取締役会
招集通知の期限原則2週間前、非公開会社は1週間前(299条)1週間前、定款で短縮可(368条)
招集手続の省略株主全員の同意(300条)取締役(・監査役)全員の同意(368条2項)
決議の省略(書面決議)株主全員の書面等による同意。定款の定め不要(319条)定款の定めが必要。監査役の異議がないこと(370条)
報告の省略株主全員の同意で可(320条)3か月に1回の職務執行報告は省略不可(372条2項)
議事録の署名・押印法律上の義務なし(施行規則72条)出席取締役・監査役の署名または記名押印(369条3項)
議事録の本店備置10年間(318条2項)10年間(371条1項)

議事録の作り方 ― 記載事項・署名押印・10年間の保存

株主総会の議事録は作成が義務づけられ(318条1項)、記載事項は会社法施行規則72条に定められています。開催の日時・場所(オンライン出席者がいればその方法を含む)、議事の経過の要領とその結果、出席した取締役・監査役等の氏名、議長の氏名、議事録の作成に係る職務を行った取締役の氏名などです。法律上の署名・押印義務はありませんが、登記申請で議事録に押印した印鑑の印鑑証明書が求められる場面があるため(商業登記規則61条6項)、議長と出席取締役が記名押印する運用が無難です。

取締役会の議事録は施行規則101条に従い、日時・場所、議事の経過の要領とその結果、特別の利害関係を有する取締役の氏名、出席者、議長の氏名などを記載し、書面の場合は出席した取締役と監査役が署名または記名押印しなければなりません(369条3項)。

保存期間と閲覧請求

株主総会議事録は総会の日から10年間本店に備え置き(318条2項)、株主と債権者はいつでも閲覧・謄写を請求できます(同条4項)。取締役会議事録も10年間の本店備置が必要です(371条1項)。

NG例 ― 日付をさかのぼって一括作成する

登記や融資の直前に、過去の日付で議事録を一括作成する例を見かけます。決議や全員同意の事実が実際にあったのなら、事実どおりの日付で作成し、作成日を付記する方法が考えられます。一方、決議の事実がないのに「開催した」とする議事録は虚偽記載として過料の対象になり得るほか(976条7号)、紛争時に会社の文書全体の信用性を疑わせます。事実がなければ、改めて開催して追認の決議を行うのが安全です。

ポイント

議事録は「議題と結論」だけでなく、「誰が出席し、誰が提案し、どのような経過で可決されたか」が分かるものにします。取締役会議事録は出席者全員の署名・記名押印が法律上の要件です。

議事録を残さないと困る4つの場面 ― 登記・融資・M&A・紛争

1. 商業登記ができない・過料のリスク

役員の選任・重任、代表取締役の選定、商号・目的の変更など、登記事項の変更は原則として2週間以内に登記しなければなりません(915条1項)。決議を要する登記には議事録の添付が必須で(商業登記法46条2項)、書面決議の場合は決議があったものとみなされることを証する書面を添付します(同条3項)。株主総会決議を要する登記では、議決権上位10名または議決権の3分の2に達するまでの株主を記載した「株主リスト」も必要です(商業登記規則61条3項)。登記を怠ると、取締役個人が100万円以下の過料に処される可能性があります(会社法976条1号)。

2. 金融機関の融資審査

金融機関は融資や経営者保証の見直しの際に、定款や決算書に加えて議事録を求めることがあります。多額の借財は取締役会の決議事項(362条4項2号)であり、決議の裏付けがなければ借入の意思決定に疑義が残るためです。

3. M&A・事業承継のデューデリジェンス

会社や事業の売却、後継者への株式承継では、買い手側の弁護士が過去10年分の議事録を確認します。役員報酬の決議(361条)、株式譲渡承認、増資、定款変更が決議なしに行われていれば、価格の減額や是正を条件とするクロージングの遅れにつながります。毎年の決算期に淡々と積み上げておくことが最大の対策です。

4. 株主・役員との紛争

少数株主から決議の不存在や取消しを主張されたとき、退任した役員から報酬や退職慰労金を請求されたとき、取締役の責任追及を受けたとき、会社の意思決定を証明する中心的な証拠が議事録です。取締役会の決議に参加し、議事録に異議をとどめなかった取締役は、その決議に賛成したものと推定されます(369条5項)ので、反対した取締役は異議を議事録に残すことが自らの責任を限定する手段になります。

ポイント

議事録は、登記・融資・M&A・紛争という会社の節目で会社を守る証拠です。毎年の定時株主総会と年4回の取締役会(取締役会設置会社の場合)を年間スケジュールに組み込み、10年分をそろえておくことが、最も費用のかからないリスク対策です。

よくある質問(FAQ)

株主が社長一人だけの会社でも、株主総会の議事録は必要ですか?
必要です。定時株主総会は毎事業年度の終了後に招集しなければならず(会社法296条1項)、株主が一人でも決算承認や役員選任の決議が求められます。実務上は、一人株主が書面で同意する書面決議(319条)の形をとり、議事録を作成して10年間保存するのが一般的です。
取締役会は年に何回開く必要がありますか?
代表取締役と業務執行取締役は3か月に1回以上、職務執行の状況を取締役会に報告する義務があるため(363条2項)、少なくとも年4回の開催が必要です。この報告は通知による省略が認められていないので(372条2項)、書面決議だけで済ませることはできません。
株主総会の書面決議(決議の省略)に定款の定めは必要ですか?
株主総会の決議の省略には定款の定めは不要で、議決権を持つ株主全員の書面または電磁的記録による同意で成立します(319条1項)。一方、取締役会の決議の省略は定款の定めが前提です(370条)。定めがなければ株主総会の特別決議で定款変更を行います。
株主総会の議事録に出席取締役の押印は必要ですか?
会社法と施行規則72条には株主総会議事録への署名・押印の義務は定められていません。ただし、代表取締役の選定などの登記申請では、議事録に押印した印鑑の印鑑証明書が求められる場面があります(商業登記規則61条6項)。議長と出席取締役が記名押印する運用をおすすめします。
役員変更の登記を忘れていました。どうなりますか?
役員の選任・退任などの変更は2週間以内に登記する必要があり(915条1項)、怠った場合は取締役個人が100万円以下の過料に処される可能性があります(976条1号)。期間を過ぎても登記申請自体は受理されますので、速やかに議事録と株主リストを整えて申請してください。

まとめ

  • 株主総会は株主が一人でも毎年必要で、招集通知は非公開会社なら1週間前、株主全員の同意があれば招集手続を省略できます(会社法296条・299条・300条)。
  • 株主総会の書面決議は全株主の書面等による同意で成立しますが、同意書と議事録の作成・10年保存は免除されません(319条・施行規則72条)。
  • 取締役会設置会社は3か月に1回以上の職務執行報告が必要で、実際の開催を省略できません。決議の省略には定款の定めが必要です(363条・370条・372条)。
  • 議事録は施行規則72条・101条の記載事項に沿って作成し、取締役会議事録は出席者が署名・記名押印、いずれも本店に10年間備え置きます(318条・369条・371条)。
  • 議事録がないと、登記(2週間以内・過料100万円以下)、融資審査、M&A、株主・役員との紛争で会社が不利になります。

株主総会・取締役会の運営は、一度仕組みを作れば毎年同じ流れで回せます。当事務所の顧問弁護士サービスでは、貴社の定款と機関設計を確認したうえで、年間スケジュールの設計、招集通知・同意書・議事録のひな型整備、過去分の点検までを継続的に支援しています。「うちの議事録は大丈夫か」と感じたら、まずはお問い合わせ(無料相談)から現状をお聞かせください。

参考(一次情報)
関連記事・関連ページ
越水 遥
この記事の執筆者
代表弁護士 越水 遥弁護士法人 越水法律事務所 代表弁護士(第一東京弁護士会)

大手法律事務所を経て越水法律事務所を設立。企業法務全般、M&A、ファイナンス、スタートアップ支援を手がけ、東証グロース上場企業の社外取締役も務める。YouTube「守りの経営ch」で経営者向けに法律を解説。

弁護士紹介を見る →

※ 本記事は一般的な情報提供を目的とするものであり、個別の事案に対する法的助言ではありません。法令・制度の内容は公開日時点のものです。具体的なご対応にあたっては、最新の法令をご確認のうえ、弁護士にご相談ください。

← 記事一覧へ戻る毎日の記事をメールで受け取る

顧問契約のご相談は無料です。
まずは会社の状況をお聞かせください。

契約書・労務・取引先トラブル・法改正対応。いま抱えている課題と事業の内容を伺い、優先して整えるべき事項と顧問契約の内容をご提案します。東京のオフィスでの面談のほか、オンラインで全国に対応しています。

お電話(平日 10:30–17:00)
03-6824-4639

✉ メルマガ登録 無料相談